鬼畜な兄と従順な妹
「何にびっくりした?」

「お部屋の豪華さと……」

「後は何だ?」

「お、お兄ちゃんの話し方です」

 実際に”お兄ちゃん”なんて呼ばれると、こそばいと言うか、変な感じがした。俺は一人っ子で、人からそんな風に呼ばれたのは初めてだ。

「だろうな。今のが俺の素の喋り方なんだ」

「はい」

「お、おい。何でも返事すればいいってもんじゃないぜ。聞かれた時だけ返事しろ」

 あ、いけねえ。つい笑っちまった。ちょっとだけだが。
 俺は笑顔を引っ込め、幸子を睨み付けた。

「今から俺が言う事は、決まりみたいなもんで、お前には全部守ってもらう。まずは俺の呼び方だが、他人がいる時は”お兄ちゃん”でいいが、俺と二人の時は……」

 えっと、どうすっかな。”お坊ちゃま”とか”ご主人様”も捨てがたいが、

「”真一様”と呼べ」

 爺やと被るが、まあいいか。

「はい、真一様」

「よし」

 なかなかいい響きじゃないか。

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