鬼畜な兄と従順な妹
「誰がこんな酷い事をしたの? 女の子の顔を殴るなんて、最低よね」

 春田先生は、ぷんぷん怒りながらお兄ちゃんに聞いた。私は、先生にどう説明するかは、お兄ちゃんに任せる事にした。

「2年のガキどもです。名前は知りません。蹴りを入れたら、泣きながら謝ってたんで、俺は見逃してやりました」

「そうなんだ。カッコいいって言うか、意外に優しいって言うか、話し方が変わってない? 村山君」

「もう、猫っかぶりはやめたんです」

「まあ、素敵」

 私もそう思った。

「先生。幸子は階段から落ちたって事にしてくれませんか? 幸子だって、大げさにしてほしくないと思うんです。幸い、大事に至ってないわけだし。なあ?」

 と言われ、私は「うん」と頷いた。

「一応は教師のはしくれの私に、規則を破れと言うわけ?」

「はい、破ってください」

「わかった。村山君の頼みじゃ断れないわね。日誌には嘘を書いておくわ」

「ありがとございます!」

 美人なのに"男前"な春田先生が、私は大好きになった。

「それにしても、ブラウスがむごい事になってるわね。ボタンを付けてあげるから、脱いでくれる?」

 え? ブラウスって……

「きゃっ」

 私は慌てて胸に手を当てたけど、今更だと思う。ブラウスの前が全部はだけ、横から、つまりお兄ちゃんからは、ブラが丸見えだった事に、私は気付いていなかった。
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