鬼畜な兄と従順な妹
 脱げと言われても、お兄ちゃんがピタッとくっ付いてる訳で、窮屈というのもあるけど、それ以前に恥ずかしい。

 それなのに春田先生は"早くして"と言わんばかりに私を見るし、お兄ちゃんに至っては右手で上着を脱がしにかかってる。

 お兄ちゃんは知ってたけど、春田先生も鬼畜ですか!?

 でも、お兄ちゃんには何度も見られてるし、触られてるし、もういい。脱いじゃう。

 という事で、私は顔を熱くしながら、上着を脱ぎ、ブラウスも脱いで春田先生に渡した。すぐにお兄ちゃんが、上着を掛けてくれたけれども。

「確かこの辺にボタンがあったはずなんだけど……」

 とか言いながら、春田先生は棚をあさっていた。

「先生、裁縫なんか出来るんですか?」

「出来るわよ、それぐらい。私だって女なのよ? あ、やっぱりあったわ」

「あまえは出来る? ボタン付け」

 お兄ちゃんが、いきなり私に振ってきた。

「で、出来る、と思う」

「怪しいなあ」

「怪しくない。出来るもん!」

 なんて言い合っていたら、

「あなた達って、本当に兄妹なの?」

 って春田先生に言われ、私は固まってしまった。意味が解らなくて。

「あら、やだ。二人して固まっちゃって。冗談よ?」

 なんだ、冗談か。と思ったのだけど……

「あなた達ってちっとも似てないし、まるで仲がいい恋人同士みたいだなって、思ったの」
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