鬼畜な兄と従順な妹
「今日は神徳とどこへ行ったんだ?」

 仕方なく、俺の方から神徳の話を振ってやった。本当は聞きたくなんかないのに。

「千葉のテーマパーク」

 ああ、あそこかあ。でも神徳とテーマパークって、今いちイメージが合わない気がする。人の事は言えないが。

「おー。じゃあ、さぞかし楽しかっただろうな」

「うん、楽しかった。お兄ちゃんは行った事あるの?」

「そりゃあ、あるさ。かなり昔だけど」

「女の子とデートで?」

「いや、家族で」

 俺が中1ぐらいの時、家族3人で行ったのを思い出した。自然と母さんの記憶がよみがえり、そんな時、今までなら加代子さんと幸子への憎しみが沸いたのだが、なぜか今は、そういう事はなくなり、そんな自分に驚いてみたり……

「もしかして、あの中のホテルに泊まったの?」

「ああ、泊まったよ」

「いいなあ。私、一度でいいから泊まってみたかったの。あの素敵なホテルに」

「また神徳と行けばいいじゃないか」

 と言ってから、俺は嫌な気分になってしまった。神徳と幸子があのホテルに泊まり、ベッドで抱き合う光景を思い浮かべてしまったからだ。

「私はお兄ちゃんと行きたい。ねえ、連れてって?」

 幸子は俺の腕を取り、甘えるように言った。幸子が身をよじらせた時、俺は気付いてしまった。幸子がノーブラだという事に。
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