異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
「ようこそ、すずなさん。負ける準備はよろしくて?」

「そんな準備はしてません」

「ふふっ、頼もしいこと」

そんな会話を少しして、御姉様の合図で、私達は壇上へと上がった。
長机に2人で座り、問題の冊子を前に鉛筆を握る。
問題は見た感じ、一枚に50問。
それが50枚ほどありそうだ。
大原さんは自前の年季の入ったそろばんを持参している。
私は………何も必要ない。
と言うのは……実はフラッシュ暗算が出来てしまうのだ。
あれは忘れもしない、小学2年の夏のこと……。
あ、突然回想に入ってごめんなさい。
御姉様の前口上が長引きそうだから、その間に説明するね?

ええと、そう小学2年の夏休み。
島に何かの営業の男がふらりとやって来た。
桜庭家にも現れた男は、ある教材を当主様に売り付けたの。
それは『フラッシュ暗算入門!』という2枚組のDVD。
男の口の上手さにすっかりだまされた当主様は、嬉しそうに購入しちゃって認知症防止のために毎日それを見始めた。
しかしその後、男が詐欺で逮捕され、売っていたDVDも何の効果もないことがわかると、当主様はお高かった教材を私に押し付け、あたかも私が欲しがったから買ったのだと言い張ったんだよね。
当時、そんな経緯がわかっていなかった私は、当主様のプレゼントだと思い、毎日その教材で勉強した。
そうするうちに、あら、不思議。
なんと、フラッシュ暗算、習得していましたとさ。

そんなアホみたいな出来事が、今、私の危機を救っているなんて、詐欺師も当主様も思いもしないだろうね?

「……………というわけで、この対決が終わった後には、是非寄付を頼む!!」

あ、ちょうど御姉様のお話が終わった。
……相当資金繰りに困ってるんだな……御姉様……これは、私の給料も危ういかもしれない……。

「では、そろそろ始めよう。両者、準備はいいか?」

御姉様の問いに、私と大原さんは頷いた。

「それではーーー始めっ!!」
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