異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
気配を消し、会場内を見渡す。
すると、壇上のすぐ下に、2つの長机と5つの椅子が用意されているのが見えた。
暫くして本部内から男が3人、女が2人、ゆっくりと出てきて椅子に腰かける。
私はその審査員を見て、あら?と首を傾げた。
…………………えーっと、あれは確か……。
長机の一番端に、良く知っている顔があった。
そう、あれは『フレデリック・リンドホルム・柏木』!!
(変態)戦艦医殿じゃないかな!?
フレディは私が気付いたと見るや、ニイッと意味深に笑った。
何?怖い??なんか企んでるの??と、体にブルルッと寒気が走った。
良く見ると審査員はいろんな職業の人から選ばれている。
フレディ(医師)と男の軍人さん。
それから主婦っぽい女の人、恰幅の良い男の人、やたらと色っぽい女の人が椅子に座っていた。
審査員の中で、フレディ以外の4人は私に敵意のある視線を送っている。
中でも、男の軍人さんの目は怖い。
一体すずなお嬢様何やらかしたんだ、と、私は大きく長く溜め息をついた。

「それでは、これより二番勝負、ピアノ対決を開始する!」

御姉様の声で私達は立ち上がり、舞台の上で頭を下げた。
壇上には先程脇に寄せられていたグランドピアノが、ど真ん中に据えられている。

「順番は、算術対決で負けた雪江嬢が先。すずな嬢が後だ。問題はあるかな?」

御姉様の問いかけに、誰も異議を唱えなかった。

「それでは、雪江嬢。準備が出来次第始めてくれていいぞ」

「はい」

大原さんはゆっくりと前に進みピアノの前で頭を下げる。
そして、赤いワンピースを翻し優雅に椅子に腰掛けた。
会場は水を打ったように静かになり、スッと両手を上げた大原さんの動作を皆が見つめている。
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