異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
夢ではないということでしょうか!?
「ん…………」

「よかった……持ち直したな……体温も戻ったようだ」

………ああ、これは夢の続き?
暖かいベッドで横たわる私の隣には、ドストライクなイケメンがいた。
彼は頬杖を付き、体をぴったりと添わせて、心配そうに私の額に手を当てる。
前回の夢では、目付きが悪くて怖そうに見えたけど、今は機嫌が良いのか刺々しい雰囲気はなかった。
そんなことより!
私は今、とんでもないことに気付いてしまい愕然としている。
男は上半身裸で、私は……薄布一枚巻かれただけのほぼ全裸なのですが!?
いやいや、夢だからいいんだよ?
私の妄想全開なんだから構わないんだけどね、うん、でもね!もっと節度ある妄想をしよう、私!!

「どうかしたか?腹が空いたか?」

ぼーっとする私を見て男は言った。
そしてその声に、私のお腹の虫は躊躇いもなく返事をしたのだ!
グゥゥーーと。

「ははは、正直だな。待ってろ、持ってこさせる」

男はベッドの縁に腰掛け、簡単にシャツを羽織ると立ち上がりドアに向かった。
私は一度男から目を外し、ぐるりと部屋を眺めた。
夢なのにすごくリアリティーのある作りでいろいろ細かく再現されている。
こういうの、どこかでみたな?と暫く考えて不意に思い出した。
ホテルだ。ホテルの一室。しかもお高いやつ。
実際に行ったことや泊まったことはないけど、テレビの旅番組で見たことがある。
ここはドラマで見る豪華ホテルの部屋と造りが似ていた。
私が人生初のホテル体験で浮かれている中、男は部屋の扉を開けて誰かと話していた。
扉にけだるそうに凭れ、腕を組んで片足で扉を支える。
その姿はとても…………エロい。
はだけたシャツが更にそのエロさを倍増させている。
そんな下らないことを考えていると、男は帰ってきて、また私の横に寝そべった。
それにしても、このエロエロな夢、一体いつまで続くの?
質感や体温、匂いや思考が細部に至るまで生々しい。
例えば、このエロい男のシャツの隙間から手を入れて体温を確かめると、ちょうど良い人肌で………

「それは……誘っているのか?」

「ふぇっ??」

「いつも……こんな風に誰かを?あ、いや……そういえば、君とちゃんと話をしたことなどなかったな。出来るだけ早くこういう機会を儲けたかったのだが……忙しくてな……」

訳のわからないことを言ったかと思うと、男は怒ったように顔を背けた。
リアルだ……ものすごくリアル。
感情まで籠ってるなんてすごい夢だ、なんて感動していると、扉をノックする音がして体がビクンと震えた。
男は私を抱き起こし、側にあった大きめのシャツ(たぶん彼のもの?)を羽織らせる。
自分のシャツははだけてるくせに、私のシャツはキッチリ上までボタンを留めてくれた。
っていうか私、ほぼ全裸なのに少しは恥じらいなさい!
丸ごと見られてる上に、人に服を着させるってどういうことよーー!
あ……でも、いつもこうだったっけ?
島にいるときも誰かが着付けてくれたりしたんだった。
そうかなるほどね、だから私の羞恥心はお留守なんだ……。
自分の特殊な境遇に呆れていると、2回目のノックが響き、男は扉に向かって「入れ」と言った。
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