異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
「あの……?」

私が御姉様の前で苦笑いしていると、不意に後ろから声がかかった。
振り向くとそこにいたのはサキちゃんママ。
いつも、空気のように無視されるのに今日はどうしたんだろう?
こんな打ち上げにも出そうにないのに……。

「こんにちは!愛田さん!」

私はばつの悪そうな顔のサキちゃんママに笑いかけた。
何度も言うけど、健全な人間関係は挨拶から!ですよね。

「……ええと……あの……」

「もう!!ママ!ちゃんと言わないと!」

口ごもるサキちゃんママを、サキちゃんが肘で小突いた。
んん?何?

「わ、わかってるわよ。あのね、昨日のピアノ演奏、素晴らしかったわ……それでね、サキにピアノを教えて貰えないかと思って……」

「え……あの……ビッ……私でいいんですか?」

ビッチですけどいいんですか!?というのは直前で飲み込んだよ……。
アブナイアブナイ。

「ええ……あなたしかいないと思って。この世界にあなたほどのピアニストはいないわ。それは昨日の演奏でわかった。私、サキには夢を持って貰いたい……だから、やりたいことをして欲しいの。こんな世界でも夢を持ちたいじゃない?」

「ええ、そうですね。本当に」

サキちゃんママは、初めて見せる柔和な表情で言った。

「今までごめんなさいね。私、あなたのことをよく知りもしないのにあんな態度を。主人のことも、ただの噂かもしれないのに、確かめもしないで………」

噂!?
はっ!色目を使ったっていうあれ??
いやーー……サキちゃんママ、それは本当にただの噂かな………?
限りなく黒に近いグレーかも……。
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