異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
「初めまして。私は、フレデリック・リンドホルム・柏木。どうかフレディとお呼び下さい」

柏木……ハーフかクォーター?

「あ。はい。よろしく……」

「それで……君の名前は?」

ん?どうした?フレディ!?
名前知ってるはずだよね?
何かの確認?これも診察の一環なのかな?
もう一度名前を言わせることにどういう意図があるのか……まぁ、いいか。

「ももせ……すずな?」

私は恐る恐る告げた。

「違うよ、ほんとの」

優しげに言うフレディの目は、笑っていなかった。
ど………ど………どうしよう……。
やっぱり、医者は騙せなかったのか。
このまま、芝居を続けても不審がられるだけかもしれない。
だけど、騙そうとしてたことがバレたら何かしらの罰があるかも……。

「大丈夫だよ。君を不利な状況に追い込んだりはしない。私は味方だと思ってくれていい。安全は保証するし色々助けにもなれる」

ほんとうにぃ??
と、私は半目でフレディを見た。

「あーー!疑ってるね!?大丈夫だったら!私を味方につけると後々楽になると思うよーー?」

確かに!!
医者なんてジョーカー、こちらの手札にあればどうとでもなりそう!
私のそんな表情に気付き、フレディはダメ押しでニッコリと笑って見せた。

「………桜庭セリ」

「おお!セリ・サクラバ!なんと、いい名前でしょう!特にセリという響きが良い!美しい!素晴らしい!」

「あ、どうも……」

ハイテンションのフレディの顔は蕩けそうに綻んでいる。
喜び方が激しすぎて、何だか私、ドン引きだよ、フレディ……。

「本当ですよ!私はセリがセリで良かったと思っています」

「はい??」

これは外国の人だからニュアンスが違うのかな?
ちょっと意味がわからない。

「ふふ、つまり《すずな》じゃなくて、セリで良かったということですよ!」
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