異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
カミングアウト!?
《え?だれ?ぼくのこえがきこえるの?どこにいるの?》

その声と同時に足(触手)の動きが止まった。

「聞こえるよ、今船の上にいるんだけど・・・」

《ふね?あ、もしかしてこのかたくてじゃまなもののこと?》

「えーと、うん、多分そうかな?」

《わかった!ちょっとまっててね!》

タコはとても機嫌良く答えると、船上で振り回していた触手を、スッと海中に沈めた。
『待ってて』って言ったよね?
まさか、これ、本人(タコ)ご登場パターン!?
私は後ろで銃を構えたままのフレディを振り返った。

「来るらしいよ………」

「何が?」

フレディは警戒を解かずに言った。

「タコよ……まっててね!だって……」

「それは……待ってろよ、今すぐ地獄に送ってやるぜ的な??」

「うーん、さっき話した限りでは、陽気なタコっていう感じだったよ?でも、陽気なサイコパスだっているしね、いや、これはオクトパスか……あはは」

「…………………」

はっ!フレディが……固まっている……。
ごめんよ!!
そんな状況じゃないのは知ってるし、ちゃんとわかってるって!!
呆れて銃を下ろしたフレディは、辺りをもう一度確認して、私の側まで近づいた。

「リラックスしてるのはいいことだけど、一応警戒はしておいて。私もいつでも撃てるように照準を合わせとくし、後ろにいるからね」

「あ、ありがと」

と、私が言うのと同時に、遥か向こうから誰かが走ってくるのが見えた。
その誰かは風のように早くこちらに近付いてくる。
そして……それが判別出来るようになった時、私はムンクの叫びの絵のようになった。

「ひぃーーー!!」

と私。

「うわぁーーー!」

と、フレディ。

「このバカヤロウ!!どういうことだ!!何をしている!?早く待避しろ!」

風のようにやって来た提督さんは、般若の顔でフレディを睨んだ。
怖い……怖すぎる……これは皆が逃げるのがわかる……。
と、そんな場合ではない。
タコがくる前になんとか提督さんを遠ざけなければ……。
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