異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
「て、提督さん?」

私の言葉に提督さんは顔を赤くしたまま、驚いて目を見開く。
どうしてだろう、そう思った瞬間だった。

「提督さん……って呼んでなかったよな」

…………しまったーーーー!!
婚約者のふりをするって決めて、わずか10分で終了ですかっ!?
提督さんがじっとこちらを見てる。
真っ赤な顔のままで。
どう言い訳をしたらいいか、そのことがぐるぐる頭の中を駆け巡り、とにかく何か言わないと!と思った時、提督さんが納得したように呟いた。

「そうか……呼び方も忘れてしまったんだな」

セ……セ……セーーーーーーフ!!
提督さん、鈍感でよかった。
フレディがバレないって言ったのが今ならわかる。

「はい……あのちなみに以前はどう呼んでました?」

「……あんた、とか……そういう?」

酷い……酷すぎやしませんか?
提督さんは事も無げに言ってるけど、それはないわー!
ほんとにビッチじゃん!!許せんな!

「ええと差し支えなければ、提督さんと呼んでも?」

そう言うと、提督さんは益々顔を赤くし、何故か挙動不審になった。
ベッドの脇に腰かけたかと思えば立ち上がり、また腰かける。

「提督さんか……そ、それでもいいが……名前でも………いい」

はい?
なんだか声が小さくなっていってますが?

「えっと?何です?ちょっと声が小さくて……」

「何でもないんだ!何とでも呼んでくれ!!」

突然弾けたように叫ぶ提督さんに、私は心底驚いて、持っていたグラスをストンと落としてしまった。
あっ!と思った時にはもう、シーツがびしょびしょ。

「大変だ、待ってろ!すぐに新しいものに変えてもらうからな!!冷たいだろうが我慢してくれ!」

提督さんは私よりも更に慌てて、風のように部屋を出ていった。
うーん、やっぱり優しいなぁ。
顔はキリリとして強面なのに、内面繊細なこのギャップ。
かなり「萌え」ます!!
一応人のモノなので、手を出したりはしませんけど(最初のはノーカンで)、側にいる間見てるくらいは許されるよね?
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