異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
「そう言えば聞くのを失念していましたが、セリさんはいったいどちらからどういった経緯でここに?海獣とは進化をして、巨大になり船を襲う怪物のこと。この世界で海獣を知らないものなどいませんよ」

この世界にいなかったからですよ、と素直に言ってしまっていいのかな?
言っても信じてもらえないと思うし……下手なことを言っても結局信じてはもらえない気がするし……。
ま、言うだけ言ってみるかー。

「あのですね、信じられないとは思いますが、私……この世界の人間ではないんです」

「ええ」

ですよね……そりゃあ信じられない……はい??
今、ええっていいましたか??

「あの、そこは、えーー!?とか、そんな、まさかっ!?とか言うんじゃないかと……まるっと信じてくれるんですか!?」

勢い余って前のめりになる私に、少尉さんは冷静に対処する。
まぁ落ち着いてと微笑むと、水差しを手にとりグラスに注いだ。

「水、どうぞ」

その声に促されまず水を一気飲みする。
そしてもう一度尋ねた。

「驚かないの?」

「驚いてます。ですが、やはり、とも思っています」

「やはりとはどういうこと?」

「セリさんが救出された時着ていた衣装が、昔、違う世界からやって来た巫女様と良く似ていたそうなんです。私も柏木医師に聞いたのですけどね」

コホンとひとつ咳払いをすると、少尉さんはまるで何か呪文を唱えるように話始めた。

「今から約50年前、第4海域(旧名バルト海)のある場所で漂流する女性が発見されました。その女性の姿は白衣に濃い紫の袴。程なく目覚めた女性は自分は日本人だといい、しかも、別の世界から来たと言ったのです。もちろん誰も信じる者はいません。ですが、その女性が目を閉じ何かを念じると風が巻き上がり、海が荒れた………というのが医師から聞いた話です」

どこかで聞いた話だな。
確か向こうの世界で、海神島から駆け落ちしていなくなったと言う巫女がいた。
結局その巫女は帰ってくることはなかったようだけど、もしかすると駆け落ちして島を出たんじゃなく、この世界にきた……とか?

「なるほど。だからそんなに驚かなかったのね」

「そうです、まぁ、半信半疑でしたけど。さて、そうとわかれば柏木医師に言ってあげなければなりませんね」

「ねぇ、フレディはなんで巫女のことそんなに詳しいの?」

「ふふ、あの人は医師でもありますが、巫女の不思議な力の研究もしているんです。巫女様研究家とでも言うんでしょうか」

巫女様研究家??
やだ、きっとろくなもんじゃない。
解体して調べようとかしないでしょうねぇ?
怪訝そうな顔をしている私を見て、少尉さんはとても愉快そうに笑い「心配ない」と安心させるように優しく言った。
そして昼食が終わってから、艦内散策をしようという少尉さんの提案を私は喜んで承諾した。
忙しいのにごめんね、少尉さん。
でも、艦内にはとても興味があるの!
フレディの所に寄るというのが、頂けないけどまぁそれは我慢しましょうか!
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