異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
「ごめんなさい!寝すぎてしまいました……明日からはちゃんと、何か仕事をしますのでっ!」

まぁ、出来る範囲の仕事ですけど。
じゃがいもの皮むきとか、人参の皮むきとか、玉ねぎの……。
皮向き全般で……。
料理は出来ないんです。
島にいるときは作ってくれる人がいたので……。
あー、使えねーな、私。

「仕事!?君が仕事を!?」

何ですか?失礼な!
そりゃあ出来ることは少ないけどしますよ!
もう一度言いますが、出来る範囲でね!
ぷうっと頬を膨らませた私を見て、提督さんは少し慌てた。そして、

「あ……いや、その、前は何もしなかっただろ?したくないって言ってたし……する必要もないんだが」

と言って、私の様子を伺ってくる。
あかんですよ!そういう提督さんの態度が、ビッチを作り出したんじゃないんですか!
………なんて、口が裂けても言えません。

「自分が食べていける分くらいの仕事はします。働かざる者食うべからずって諺あるでしょ?」

あるのかな?こっちの日本に。
でも、間違ったことは言ってないよね。

「………………」

提督さんは黙ってしまって、狐につままれたような顔で私を見た。
広いベッドの真ん中に私、少し離れた縁に提督さん。
微妙な距離がとても居心地が悪い。
私は、あまりに見つめられるので、何か変なことを言ったのかと不安になった。
諺かな?やっぱりこの世界にはなかった?

「昨日から思っていたんだが、君はすごく変わったな。まるで別人だ」

「そ、そ、そぉですかぁ?」

あわわわわ………。
ここに来て鈍感も返上ですか提督さん!?
いや、それどころじゃない!

「何が君を変えたんだろうな……一度死んで生まれ変わったのか?」

死にかけましたが、生まれ変わってません。

「こんなことを言ったら、気分を害するかもしれないが……その、今の君は……とても……その……」

どうしたことか提督さん、誰もいない壁の方を向いてしまいましたよ。
何ですかね?人と話すときは、その人の方を向くように先生に言われなかったのでしょうか?
というのはさておき。

「提督さん?どうしました?」

壁を見たままの提督さんに問いかけると、チラッと伺うようにこっちを向き、今度は私の真正面に座り直した。
まぁ、それはいいんだけど……。
やたらと距離が近いのは何故なのか!?
本人もその近すぎる距離には気付いているけど、今更どうしようも出来なくて、もぞもぞして落ち着かない……。
やだ……可愛くて萌えます……。
< 38 / 188 >

この作品をシェア

pagetop