異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
提督さん、滾る
「姉に何か言われなかったか!?」

仕事から帰るなり、提督さんはそう言って私の肩をガッと掴んだ。
お陰で「おかえりなさい」の「おか」しか言えなかった!
まぁそんなことはいい。
何か言われたといえば、言われたけど、それを告げ口みたいに言いたくもないのよねぇ。
言えちゃう子の方が可愛いんだろうけど、どうもそれは私のキャラじゃないっていうかね。

「いえ、特には」

「本当か??」

提督さんは信じてないみたいだ。
姉だからね、よく知ってるからわかるのかも。

「はい。少し檄を飛ばされた?だけです」

うん、間違ってない、間違ってない??のか?
その答えに納得して、漸く提督さんは掴んだ手を離した。

「そうか、本当はオレが付いて行きたかったんだが仕事でな、何もされなくて良かったよ」

何かされる可能性はあったんだ……。
そういえば御姉様、物騒なこと言ってたような気もするわ……。

「ありがとうございます。でも大丈夫です。提督さんはお仕事してください」

「……無理してないか?」

「してませんよー!そう見えましたか?」

「いや……そうじゃなく……そうじゃなくて」

何だろう?
無理してないって言ってるじゃん!!
俯いて頭を掻く提督さんの考えがいまいち掴めないなぁ。

「あ、そうだ、一つお願いがあります」

「なんだ!!言ってみろ!!」

ちょっと食い気味に頭を上げた提督さんに、私は驚いて半歩後ずさってしまった。
そして、その半歩を大股の一歩で埋められ、もう体がくっつきそうな位置で途方に暮れる私がここに!!
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