異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
「一人で生きていく??それは聞き捨てならんな。君は誰の婚約者なんだ?」

「……て、提督さん……」

「オレの名前は?」

はっ!?なんだっけ??
ええと、名字は、楸学園の……

「楸……鷹人…さん」

「そうだ。君はそう遠くない未来同じ名字になるんだ。それはちゃんと自覚してもらわないと困る。君とはそう話合っただろ?」

………今なんか含みを感じたけど……気のせいかな?
それにしても、力つよい……。
いくら鍛えてるにしてもこの力は凄いな。
加減はしてるんだろうけど、それでも全く体が動かせない。
……なるほど、理解しました。
力では敵わない!!
ここはなんとか上手く誤魔化して……。

「はい、自覚はしています。多分少し誤解があったようですね?」

「誤解??」

と言って、提督さんは上から私を覗き込んだ。
よしよし、力が弛んだぞっ!!

「そうです!一人で生きて行けるくらいにしっかりした人間になりたいと言うことなんです!!だから、提督さんも私を甘やかさないでくださいね!」

「……………………」

あれ?
おかしいな、私の予想ではここで、

『そうだったのか!!ごめん、勘違いしてたよ!!わかった、オレも君のことを応援するよ!』

となるはず。
それがどうしたことか、提督さんはじーっと私を見たまま、当然力も弛めず沈黙している。
わからない……。
何考えてるか全然わからないよ!?

「甘やかしたいんだ」

あ、あ、甘やかしたい?

「君の意志は尊重するが、あまり強くなられても困る。オレのすることがなくなるだろ?」

「はぁ……」

「服はオレが買う、わかったな?」

うぅ………ま、負けた……。

「その代わり、初任給が出たら何か美味しいものでも奢ってくれ」

提督さんは強めの眼力をふっと緩め、ニッコリと微笑んだ。
そのギャップーーー!
下げてぇ……上げるっ!!
大人の男のテクを見ました!!
これは敵いません……私の完敗です。

「はい……」

私は敗北を認め、心の底からの賛辞を提督さんに贈った、のであります。
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