異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
「おおー!輝いて見えます!割引券!」

「ふふっ、半年間有効だから。いつでも提督様と来てね!」

「もちろん行きます!!美味しいんでしょうねぇ……やはり、メインはパスタでしょうか!?ピザとかもあります?」

「あるわよーー!窯で焼いてるからね!美味しいわよ」

「た、楽しみにしてます!(じゅる)」

おっとよだれが……。

「こちらこそ!お待ちしてるわ!じゃあ、よろしくねー!」

明るい笑顔を振り撒いて、りょうくんママは仕事に向かった。
ピザ、パスタ………。
正直この世界に来て、イタリアンが食べられるとは思っていなかった。
他の食べ物だって同じだけど、陸地がないのにどうやって作物が育つんだ!?
って思うじゃない?
だけど、科学技術というものはその時の世界に必要な方に進化していくものらしい。
この世界では、バイオ科学技術が恐ろしく発達していて、船の中でも穀物の栽培や、家畜の飼育とそれの加工など、陸地で出来ることはある程度出来てしまうのだ。
まだ行ったことはないけど、船の外には、太陽光を利用したソーラーシステムもあり、その動力を使って様々な食物の栽培がされている。
その代わり、サイバー方面は普及してない。
もちろんスマホなんてないし、人を呼び出すのに館内放送してるくらいだ。
場所はマイクロチップで把握はしてるんだろうけどね。

「おはよーすずなお姉さん!」

ハッとして振り向くと、今度はひろとくんがやって来た。

「おはよう、ひろとくん!」

ニコッと笑い、元気良く保育ルームにかけ上がるひろとくん。
その背中を見ていると、すぐ後ろから控えめな声が聞こえてきた。

「……おはようございます」

「あ、おはようございます!!」

こちらを伺うように挨拶するのは、ひろとくんママ。
彼女はすずなお嬢様と何度も顔を合わせていて、迷惑を思いきり被った被害者の一人だ。
そのためか、最初私を見る目が怯えていた。
何ていうか……独裁者を見る目?
一体何をされたの!?
と、そんな感じだったので、普通にお話するのに結構時間がかかった……。
アブナクナイヨー、コワクナイヨーって知ってもらうのがね……。

「今日は定時のお迎えですか?」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「了解でーす!いってらっしゃいませ!」

ひろとくんママはビクッと震え、弱々しく笑うと仕事へと向かっていった。
うーん、まだまだコミュニケーションが足らないな。
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