異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
女優は不敵な笑みを浮かべる
それは、私がこの世界に来て、およそ1ヶ月が経とうとしていたある日の出来事だった。
楸学園では毎年恒例の文化祭の準備で皆大変忙しい。
この時ばかりは私も定時では上がらず、残業なるものをさせて貰っている。
残業……よくドラマとかで見る、要領の悪い人が残って仕事をするアレ。
若しくは、仕事量が多すぎて時間内に終わらないから残ってやっちゃうアレ。
その時たまに上司や同僚と、恋が芽生えたりするらしい!!
ははっ、テレビの見すぎか!!
私の残業は後者で、もちろん恋が芽生えたりはしない。
紙でお花を作る単純作業をしながら、軽く現実逃避をしてしまう程には、私の精神は参っていた。
延々と続く花作り。
他の先生方は学習発表とか、学年の出し物の準備で忙しいし、御姉様も各業者との会合で最近はほとんど留守だ。
そのせいか、こちらに対する風当たりがキツくなってだね。
本当は一学年で割り当てて作るお花を全部押し付けられた形になっていた。
三百個はあるな……文化祭までに終わるかなこれ……。

作っては指定された箱に入れ、という作業を繰り返し、ふぅと溜め息をつくと、ちょうど会合を終えた御姉様が帰ってきたのが見えた。
そして、御姉様ともう一人、スラッとしてて出るとこちゃんと出てる、ナイスバディの女性がこちらにむかって歩いてくる。
御姉様とその女性が並んで歩くと、もの凄い迫力。
なんだか、イケメン俳優とハリウッド女優みたいですよ?
つまり、絵になるってことです。

「ご苦労さん!そろそろ切り上げた方がいいぞ」

こちらに目を止めて、御姉様が叫んだ。

「あ、はーい!お迎えが来たら帰りまーす!」

そう、この時期に合わせてお迎えも少し遅くしてもらってる。
もうそろそろお迎えもいらないかなと思ってるけど、やっぱりどう言っても提督さんには聞いてもらえなかった。
婚約者(お嬢様)に対する執着、凄くない??
過保護にもほどがあるような………。
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