With You
「いくちゃん…」



涙のことは言えなかった

だって僕の目から見ている君は必死に明るく「あたしはねもう帰るんだ。ひろくんは遊びに行くんでしょ?」
って涙のあとが残る頬を上げて笑うから。




「うん。…今からユウくんと一緒に虫取りにね」



なんで言葉をかけなかったんだろう?



なんでこのとき、大丈夫の一言も言わなかったのだろう?



僕は安心していた。
涙を隠してまで笑う君に。
きっとお母さんに怒られたのかな?と簡単に思ってた。



このとき僕は君の気持ちに気づいてあげられなかった。
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