With You

そしてとうとう玄関へ。

｢たっだいまー!｣


元気有り余った声で叫ぶ彼。
するとすぐに、奥からパタパタとスリッパの音が軽快なリズムを刻んでいた。


｢あんた、郁奈ちゃん見なかっ…てあら!一緒に帰ってたの?｣


見慣れない綺麗な女の人が私の前に現れた。


｢そうだし。公園でな。…ていうか、スリッパ、パタパタうるさいんだけど｣



｢うるさいわね、まあ早くしなさい。ご飯出来てるわよ。今日は郁奈ちゃんのお家の引っ越し初日だから近所さんたちも呼んで宴会状態よ。盛大に作ったんだから!｣




｢みんな来てるんだろ?懐かしい｣




｢ほんと懐かしいわ。あんたしっかり挨拶しなさいよ｣

どうやらこの会話を聞く限り2人は親子らしい。そして下を見ると、お馴染みの自分の両親の靴が置いてあった｡


｢それにしても郁奈ちゃん可愛くなって!こう見ると比呂と全然釣り合ってないわねー｣


彼のお母さんはキョロキョロと私と比呂と呼ばれる彼を見つめていた。


そういえば、彼の名前まだ知らなかったんだっけ。
比呂って言うんだ…。