背中に、羽を。



「……天使だ……」



言葉にした瞬間、目の前の"天使"はぼろぼろに壊れるのではないかと思った。



ふわりと、羽がふってくる。



さわることはできなかったから、本物なんだ、と確信に近づいた。



背中に、真っ白な羽がある。



銀色のさらさらな髪。透明にも思えるほどつやつやで長いまつげ。



完璧な美少年。



あぁ、天使だと思った。



「死ぬの?」



彼の柔らかそうな唇が、言葉を紡いだ。



僕のいるこの病室よりも、ずっとずっと真っ白な肌。



全部真っ白。それなのに、綺麗だった。



白はつまらないと思って、この病室のなかで日々を生きてきたのに。



考えが、覆る。
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