背中に、羽を。



「ありがとう。じゃあ、僕は死ぬね」



目を合わせたあと、僕らはうなずいた。



ナイフを喉仏あたりに押しあて、そのあと、横にはらう。



ざっくりとやった。一気に、やることができた。



焼けるような痛みが広がる。



だけど、それすらも幸せに繋がる道だと思えば、涙は出なかった。



……でも、痛いものは痛い。



ベッドの上をのたうちまわる。



せめて、と思って天使の顔をみる。



……すると。





「まだ死んじゃダメだよ?



君にはこれから、絶望してもらわなきゃいけないんだから」



天使は、美しすぎてあやしい、笑みを浮かべていた。



意味がわからない。



そのとき、咳がでて血を吐いた。
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