背中に、羽を。
天使の言葉に、僕はあっと驚く。
最後に、幸福をプレゼントしてくれるのか。
どこまで、天使というやつは優しいのだろう。
「そうなのか……。ありがとう。
僕、君のおかげで、死んでも苦しくなさそうだよ」
僕が笑うと、天使はへらりと笑った。
お客さんに、笑顔を向けなきゃいけないから、という理由で浮かべる、マニュアルどおりの笑みではないようにみえた。
それがうれしくて、僕は、いますぐ死んでも構わないと思った。
「最後にひとつだけ、教えてくれない?」
僕がおずおずと訊くと、
「最後と言わず、いくつでもどうぞ」
と天使は答えてくれた。