背中に、羽を。



「そんな感じで、ひとを幸せにさせるんだ。



そのあと、死ぬ直前におもいっきり絶望させる。



こういうふうに、悪魔は仕事をこなしていくんだ」



それを聞いて、僕は少し怖くなった。



悪魔だって仕事なんだから、悪いことをしているわけじゃないのだろう。



だけど、そんなの……人間からしたら、あんまりだと思った。



「僕のもとに来てくれたのが、君で……天使でよかったよ」



僕が笑うと、天使は目を細めた。



それを合図に、僕は、後悔なんてないくらい、幸せに思えた。



こんなに綺麗な天使に見守られて死ねるんだ。



優しい彼につれられて、天国にいけるんだ。



いままで生きてきて、こんなにも素敵なひとに出会ったことはあっただろうか?



……いや、なかった。



人生で最初で最後の、いいひとだった。



幸せなひとときだった。
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