turning
彼は腕時計を見て、シートベルトを外した。

「そろそろ行かなきゃ」

私はそう呟いた彼の方に身を乗り出し、至近距離で目を合わせた。

驚いて目を見開く上条君。

あの時の私もこんな顔をしていたのかと思うとおかしくて、ちょっとスッとした。


そっと、
唇を重ねる。


気持ちよさに溶けそうになった。

好きな人とのキスって、
どうしてこんなに幸せを感じるんだろう。

どうしてこんなに
胸が痛いくらいぎゅうっとなるんだろう。

初めてのキスはこんなこと考えたり感じる間もなかった。


体を離すと、上条君が言った。

「こんなこと言うと怒られると思うけど、卒業式の後にキスして、後悔してない。初めては三日月さんとしたかったから」

「あのねぇ、好きじゃなかったらひっぱたいてるセリフだよ。上条君っておとなしそうにみえて、結構我が強いよね」

「ね、もう一回しよ」

「社有車だからディープなのと長いのは駄目」

笑われた。

「あーもー三日月さん、好き」

「ありがとう。私も」







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