turning
次の話題は、音楽と将棋について。
漆原は将棋がわからないので、主に上条君が話す。
誠実に、淡々と語る上条君。たぶんちゃんと話す内容を考えてきたんだろう。

そういえば彼は、無口なように見えて、語る時には結構語るタイプだった。

彼は、ぱっと見、それほど年をとっていなかった。

高校時代のまま、落ち着いていて、穏やかで、真面目で、ピュア。
見た目、どこにでもいそうな普通の男の子が、少しだけ幼さが抜けて、普通の男性になったくらいの違いしかなかった。

一番変わったなと感じたのは、存在感の重さ。
それから、言葉の重み。

第一線で戦い続けて鍛えられてきた芯の強さが、見た目は普通だけど中身は普通じゃない男性だと感じさせる。

見た目が華やかな漆原と比べると、いぶし銀のようだ。



続いて、お互いの学生生活について。

「上条さんがプロ棋士になったのは高校を卒業した春と伺っています。どのような学生生活だったんですか? 印象に残っている出来事などはありますか?」

脳裏に浮かぶ、あの出来事。

目を逸らしたいけど、逸らせなくて、上条君の答えを待った。

「ヴァイオリニストを目指している同級生がいて、ちょっと異端な存在同士で親しくなりました。クラシックに本格的にはまる前、何となく興味を持っていたのは、その友人の影響です」

高校の同級生でヴァイオリニスト目指してたのなんて、私くらいだ。

「戦友ともいうべき、心強い存在でした」




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