SHALIMAR -愛の殿堂-
「無事終わった」
俺がそっけなく返して、それでも思い直したかのように吉住に、隣人のそっけない女の話を聞かせた。
「イマドキ挨拶なんて行くヤツ居るのかよ」
と吉住は全然関係のない場所にツッコんでくる。
「そーゆうもんなの?」
「お前が選ぶようなマンションやアパートだったら一人暮らし向けだろ?今はプライバシーに関わることだから、知られたくない住人も多いんじゃない?」
確かに……
あの間取りで二人以上住むのは難しいよな。
てことは隣の女も一人暮らしってことか…
でもふと思った。俺が俺ではなく、吉住だったらあの女もドアをピシャリと閉めることはないんだろうな…って。
「んで?その女美人??」
吉住はワクワクにこにこ聞いてきた。
プライバシーはどこへ行ったんだよ。と心の中でツッコむも、
「……美人ぽい…」
俺は何故か素直に答えていた。
「何だよ、“ぽい”って」
「分かんね。だってすっぴんだったし。寝起きぽかったし」
「寝起き!?何ておいしいシチュエーション♪」
吉住は楽しそうに顔の前で手を合わせた。
「おいしいかぁ??昼の三時まで寝てるってどんな女だよ」
俺が呆れて言うと、
「もしかして“夜のお仕事”!?♪」
吉住はまたも楽しそうに声を弾ませた。