SHALIMAR -愛の殿堂-
ポイントカードあります。
と、まぁここまで知って、彼女がいわゆる『夜のお仕事』ではなさそうであることだけを知った。
その一ヶ月の間に俺自身の環境も変わった。
バイトをはじめたのだ。
最寄駅に隣接している大きなスーパーマーケットの食品売り場のレジ店員。“にこにこマート”なんて健全で優しいネーミングの割には、
夜の12時まで開いてるし、酒の種類がやたらと豊富。
全然健全じゃぁない。ついでに言うと従業員にも優しくない。
俺は主婦パートたちが帰っていく6時から入れ替わりに閉店まで働くことが多くなった。
12時まで開いてるスーパーは珍しいのか、夜遅くても結構繁盛している。
だけど10時を過ぎる頃から急に客足が減る。
暇を弄びながら欠伸をかみ殺し、レジでじっと客が来るのを待つのは苦痛だ。
「なぁなぁ、あれから例の隣人見た??」
俺の前のレジで、吉住が同じように暇そうにしながら振り返った。
言うまでもなく、このバイトを紹介してくれたのは吉住で。
この春、就職が決まった大学生たちが数人バイトを辞めてしまったので、人手を探していたようだ。
タイミングが良かったんだよな。世話好きの吉住に感謝だ。
「ああー…そいやぁ見てないかも」
あれから一度も顔を合わせてない。
廊下で顔を合わすこともなければ、俺が妄想で描いていたゴミ捨て場でばったりと言うのもない。
それどころか他の住人ですらすれ違うこともあまりない。
考えてみれば人それぞれ生活のリズムてのがあって、マンションの部屋から外に出るまでほんの数分だ。その短い間に何かを期待する俺が間違っている。
正直隣人のことを考える余裕などなくて、ほとんど存在を忘れかけていた俺だが。
「てかお前まだその話覚えてたの?」
「そりゃ覚えてるさ~」
女好きの遊び人め。こうゆうとこだけやたらと記憶力がいいんだからな!