SHALIMAR -愛の殿堂-





―――さっきのアイスクイーンが隣人だったら??





いや、どうすることもないだろう。


何せ引越しの挨拶に行ったら、無言でドアを閉められたんだからな。


冷たいどころじゃないし。


どうせお近づきになるなら、可愛くて優しい(同年代の)女の子がいいに決まってる。彼女は俺より年上に見えたし。


なんてブツブツ考えながらマンションにたどり着いて、


それでも5階に昇り終えると、ドキドキと心臓が跳ね上がった。


何意識してんだよ。


自分で自分に言い聞かせるも、やっぱり気になって俺は緊張した面持ちで隣の部屋の前を通過…しようと思った。


5月の夜―――


春の風が心地良く廊下を吹き抜け、僅かな香りを鼻に運んでくる。


覚えのある上品な香り。


お香のようなしっとりと、わずかにバニラの甘さを含んだ風変わりな香り―――


さっきあのアイスクイーンが纏っていた香りと同じ。


隣の部屋のドアは僅かに開いていて、ドアと玄関の敷地の隙間に水の入れたペットボトルが挟まれていた。


風通しをよくしているのだろうか。


ふわりとあの心地良い香りに混じって、食べ物の―――いい香り…






麻婆豆腐??






ネギと木綿豆腐…



さっきアイスクイーンが買い物をしていった内容を思い出し、俺は慌てて頭を振った。


まさか。そんな偶然……





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