SHALIMAR -愛の殿堂-



え―――……


「だって、あのとき鍵かけたんじゃ……?」


「鍵?違うよ。チェーン越しだったら感じ悪いかなと思って一度ドアを閉めてチェーンを外してたの」


あの、ガチャガチャって音は、鍵を閉めてたんじゃなくて、チェーンを開けてた??


ドアを閉められたって俺の勘違い!?


「す、すみません!俺!何か感じ悪くて」


俺が慌てて謝ると、


「ううん。私も何も言わずにドア閉めちゃったから、こっちも悪いし」


感じ悪いと思っていたら俺の勘違いで、しかも見た目の第一印象よりもずっといいひとだった。


しかも





「さっき、にこにこマートでレジしてくれた子でしょ?


私、職業柄一回見た顔忘れないの」





やっぱり…


やっぱりアイスクイーンは隣の人だった!てか、俺のこと覚えててくれたんだ。


てか職業って何してる人なんだろう……


でもいきなりぶしつけに「何してるんですか?」とか聞けない。


「す、すごいぐーぜんですね」


と、ようやく出てきた言葉は、声がひっくり返った。


だってこんな運命(?)みたいな出会い…


って良く考えりゃ隣に住んでる彼女が最寄の駅のスーパーを利用するのは当たり前のことで。


ご近所さんなんだし、偶然顔を合わせることなんていくらでもある。


それでもこの一ヶ月間他の住人と顔を合わせてないことを考えると、恋愛初心者の俺はやっぱり運命的な何かを感じちゃったりして。


ってか俺、自分の身をわきまえろよ。


相手は吉住でもおちない大人の女だぜ?







そんな人が俺を相手にしてくれるわけないって。






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