SHALIMAR -愛の殿堂-



褒めちぎれ。


吉住の言葉を思い出しながら、俺はまたも思い切って問いかけてみた。


「あの!こないだは麻婆豆腐ありがとうございました!


すっげぇうまかったです」


「ほんと?良かった」


彼女は例のごとくバニラの息を吐きながら、軽く声をたてて笑った。


「あ…あんまりうまかったから、俺も自分で作ってみようかな…って、思って…」


うわ、何どもってんだよ!


と心の中で慌てふためくも、


「思って?」と彼女は気にした様子がなく、続きを促した。


それに幾分かほっと胸を撫で下ろす。


深呼吸をして、


「…市販の素で作ってみたんですけど…やっぱりあの味にならなくて…」


わざとらし過ぎたかな??でもホントのことだ。


ちょっと心配になって最後の方の声が消えかかった。


「あー、あれね。甜麺醤と豆板醤の配合を覚えれば簡単だよ」


てんねんジャン??


何それ。


「テンメンジャン。中華味噌のこと」


くすっと笑われて、でもそれに嫌な気がしなかった。


吉住の言った通りだ!俺、こんなに女と会話が続いたのはじめてだよ!


「ひき肉は解凍だからどうかなーって思ったケド、おいしいって言ってもらえて良かった」


カラン…


乾いた空に、乾いた音が響いた。





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