SHALIMAR -愛の殿堂-
カランカラン…
星のまばたくきれいな夜空に、その音が心地よく響く。
その音に乗ってバニラの―――…葉巻の香りが香ってくる。
「あの…葉巻好きなんスね。いつも葉巻なんですか?」
「好きってわけじゃないけど。どっちかって言うとタバコの方が好き。“ふかす”より“吸う”方が慣れてるし。
たまに癖で肺に入れちゃうと―――」
ふかす??吸う?どっちも一緒じゃないの?
俺はどっちもやったことがないからその意味が分からない。
それでも
「…肺に入れちゃうと、どうなるんですか?」
「その話しの続きはまた今度」
彼女はまたもクスリと薄く笑い声を漏らして、カラカラ…ベランダの窓を開けて中に入ってしまった。
何だか中途半端に話しが終わってしまって、俺は消化不良。
でも―――……
“また次”がある。
そう思うと自然に胸が高鳴った。
カラカラ…
あ、また扉が開いた。
もしかして続きの話し??もう終わらせたいのかな…
一瞬そんな不安な考えが過ぎったが、
「タッパー、今度返してね」
彼女は壁越しにそれだけ言うと、今度こそ窓をきちんと閉めた。
『また今度』―――
それがアラビアンナイトの恋のはじまりだった。