SHALIMAR -愛の殿堂-
「ふーん、なるほどね♪」
吉住はニマっと笑うと、俺を覗き込んできた。
「奥手の健人も遂に女と??しかも相手は“美しい隣人”ときた。俺にも見せろ!由紀恵さんを!」
吉住が勢い込み、
もう会ってるって…とは言い出せなかった俺。
と言うかこの勢いに隣人であることを否定できなかった俺。
「とにかく教えろよ」
俺が睨むと、吉住は楽しそうに考え込んだ。
「その状況にもよるし、そもそも二人の仲はどんな感じなの?」
確かに詳しい状況を知らなきゃ、さすがの吉住も次にどう進めて行くかなんて分からないよな。
俺は諦めて当たり障りのない内容を話し聞かせた。
「何ぃ!?たったの五分だけ!それも一ヶ月!」
吉住が勢い込み、俺は若干引き腰。
「お前もよくやるな…俺だったら手っ取り早く『そっちに行っていいですか?』って言うのに。ってかそれで好きとかって…」
吉住が哀れむような呆れるような表情で俺を見てきて、俺はそれに何も返せなかった。
そりゃ…吉住ほどかっこよくて、慣れてるやつならその技が通じるがな、俺には無理。
五分だけの会話でさえも、すっげぇ緊張するし。
「まぁあれだ。とりあえず由紀恵さんに彼氏がいるかどうかを知るのは必要じゃね?」
彼氏…かぁ。
「なぁなぁ!今度由紀恵さんに会わせろよ~!」
と言う吉住を放っておいて、俺は口の中でブツブツ。
どうやって探ろう。
――――
――
「こんばんは」
今日も隣から葉巻の香りを漂ってきたのを見計らって、今度は思いきって俺の方からちょっと顔を出し、隣のベランダを見た。
「こんばんは」
彼女は今日も白いシャツに赤いフレームのメガネ。
赤い爪の指で細い葉巻をはさみながら、にっこりと笑ってくれた。