SHALIMAR -愛の殿堂-


その考えはここ三日ほどイヤと言うほど考えた。


だけど口には出さない。


口にしてしまえば最後。本当にそうなってしまうかもしれないから。


俺はまだ、やり残したことがたくさんある気がするし、


その一つ一つを彼女に伝えるまで―――


諦められない。



作戦を練り直すか。


『ぐぅ~…』


腹が鳴って、俺は音のした場所を押さえた。


「その前に腹ごしらえだ。腹が減っては戦ができぬ。だしな」


とは言っても俺が作れる料理なんてたかが知れてる。


手の込んだ料理なんて無理だし、作る気がしない。


彼女の作った麻婆豆腐が食いたい。そんな思いでにこにこマートの惣菜コーナーをふらふら。


あ、鮭弁当が半額。しかもラス1。


やり!♪


半額シールが張られた四角い弁当のパックに手を伸ばすと、


がしっ!


すぐ近くから鮭弁当を狙っていた客の手と重なって、俺は顔を上げた。


このパターンってあれだよな…


偶然同じものをとって恋が芽生えるって言う…


だけど、鮭弁だぜ??色気がないぜ。


ってか俺の思考ってどこまで短絡的なんだよ!


自分の考えに呆れたようにその人物を見ると、





「あ」





鮭弁当に手を置いた“彼女”がびっくりしたように目をまばたいていた。





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