SHALIMAR -愛の殿堂-


大学に入ってから一年は実家から通っていた。


電車を三本も乗り継いで、毎日片道二時間もかけて大学に行くのが大変だったから、大学の近くで独り暮らしをすることに決めたわけだけど。


その分勉強もできるし。


なんて親を説得して。


言っておくが俺は必死になって勉強するほど真面目じゃない。


『心身科学部』なんていかにも頭が良さそ~な学部には属しているが、授業内容である「人間の心と身体の両面から探求する」と言うモットーが、俺自身一番できてない。


かと言って遊び呆けている放蕩息子でもないが。


家族と折り合いが悪くて~とかそういう暗い事情もない。


なのに独り暮らしを決めたのは、


やっぱ片道二時間の通学だよなぁ。


友達もこっちに住んでる奴らが多いし、彼女とかできれば部屋に呼べるかな…と若干…いや、かなり不純な動機だな。




でも俺、


彼女居ない歴=年齢




20年間寂しい人生を送ってきたわけだ。




独り暮らしすることを決めたし、今年こそ彼女を作るぞ!



と意気込んだ春。





すぐ近くの小さくて汚い川の両側に、水の流れとはまるきり反対で美しく儚げな桜の花が咲く頃、



俺はそのマンションに引越しをした。





< 4 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop