SHALIMAR -愛の殿堂-
大学に入ってから一年は実家から通っていた。
電車を三本も乗り継いで、毎日片道二時間もかけて大学に行くのが大変だったから、大学の近くで独り暮らしをすることに決めたわけだけど。
その分勉強もできるし。
なんて親を説得して。
言っておくが俺は必死になって勉強するほど真面目じゃない。
『心身科学部』なんていかにも頭が良さそ~な学部には属しているが、授業内容である「人間の心と身体の両面から探求する」と言うモットーが、俺自身一番できてない。
かと言って遊び呆けている放蕩息子でもないが。
家族と折り合いが悪くて~とかそういう暗い事情もない。
なのに独り暮らしを決めたのは、
やっぱ片道二時間の通学だよなぁ。
友達もこっちに住んでる奴らが多いし、彼女とかできれば部屋に呼べるかな…と若干…いや、かなり不純な動機だな。
でも俺、
彼女居ない歴=年齢
20年間寂しい人生を送ってきたわけだ。
独り暮らしすることを決めたし、今年こそ彼女を作るぞ!
と意気込んだ春。
すぐ近くの小さくて汚い川の両側に、水の流れとはまるきり反対で美しく儚げな桜の花が咲く頃、
俺はそのマンションに引越しをした。