SHALIMAR -愛の殿堂-
―――……は!嘘っ!!
俺の方もびっくりし過ぎて声が出ない。
“彼女”はいつもベランダで見るメガネにすっぴんと言う姿ではなく、今日は濃いグレーのパンツスーツ姿に、髪をハーフアップにしていた。
メガネはなし。
それはこの場所で呼ばれている“アイスクイーン”の姿だった。
「偶然。キミも買い物?」
「…あ!はいっ!!」
慌てて手を引っ込める。
半額シールなんて張られたお徳用弁当を掴もうとしている俺。
どこまでもカッコつかない。
でも状況は彼女も同じ。
「今日は自炊しないんですね」
「疲れてて。仕事の都合でここ三日ほどあまり家に帰ってないの。作る元気なんてない」
と彼女は恥じらいもなく、カラカラと笑った。
それよりも…
三日ほど家に帰ってない?仕事の都合…?
何だ、俺避けられてると思った。
もしかしたら新しい彼氏ができて、そいつんちに泊まってるのだろうかと要らないことも考えたり…
なるべくネガティブなことを考えないようしてたけど、いつも通り、あのベランダで顔を合わせるときと変わらない彼女の姿を見て、
いいようのない安堵感を覚えた。