SHALIMAR -愛の殿堂-


「鮭弁当、どうぞ」


俺が弁当を促すと、


「キミだって狙ってたでしょ?」


と、うっすら笑う。


メガネがないし、化粧もしてるから。


それにいつもは俺たちの間を隔てているベランダの壁もない。


こうやって並んで立つと、意外に背が低いことが分かった。足元を見ると背の高いピンヒール。


これを脱いだらもっと低くなるってことか。


新しい事実をいくつも発見して、今日は何だか彼女がいつもより近く感じる。


それに



今日はいつもと違って何だか……





「私の顔変?」


じっと見つめていたからだろうか、彼女が怪訝そうに言って頬に手を当てる。


「化粧直ししてないから酷い顔してる?」


「い、いえ!ちょっと雰囲気違って、こっちもきれいだな…って」


「…………」


はっ!!


言ったあとになって気付いた。






俺、何てことをーーーー!!!






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