SHALIMAR -愛の殿堂-
本当に疲れているのだろう。
彼女は時折肩を回してかごを持ち替えていた。
ここでさりげなく持ってあげるのが男だよな…
さりげなく、さりげな~く…
そろりとかごに手を伸ばしたが、
「じゃ、私もう買うものないし。先行ってるね」
と、すたすたとレジに行ってしまう。
あぁ…
ってかどこまでかっこがつかない俺!!
伸ばした手を慌てて引っ込める。
弁当と飲み物だけを入れたかごを手にレジの前に並ぶと、俺の後を引き継いだ吉住が“ミスウェンズデイ”とお喋り中だった。
ミスウェンズデイは大学生ぐらいだろうか。結構…いや、かなり可愛い。
淡いパステルカラーのスカートをひらつかせ、お嬢っぽい内巻きの髪を揺らし、清算しながら吉住と楽しそう。
吉住…相変わらずだな。
若干呆れ返って、それでもミスウェンズデイのレジが終わると吉住が俺に気付き、こっちに向かって、ぶんぶん手を振ってきた。
「今日の戦利品はから揚げ弁当か」
俺の弁当を手に取りスキャンをする吉住。
…それと鮭弁当…
アイスクイーンの“彼女”と半分こするのだと言えばこいつはどんな顔をするだろう。
ってかそんなこと恥ずかしくて言えやしないが。
言えやしない…
が
「お先。あとでね」
アイスクイーンが俺の方を見てちょっと笑いかけ、鮭弁当が入ったビニール袋を提げて颯爽と出口へ向かうのを見て、
「は!?お前、あの人と知り合いなの!!」
やっぱり
吉住が食いついてきた。