SHALIMAR -愛の殿堂-
ピンポーン
インターホンを押してドキドキ。
すぐ右隣の住人に引越しの挨拶だ。
親から手渡された洋菓子の箱を手に、緊張…
隣の住人がどんなひとなのか分からない。
表札も出ていないから苗字も知らない。男か女かも、分からない。
女―――…だったらいいな。
いや、女だったら気を遣うかな。
同じ年代の女の子だったらいいな。
いや、それこそ気を遣うだろ。
でもでも、お隣さん同士だし?ゴミ捨てやなんかが偶然一緒になってお近づきになれることがあるかも。
ありがちだな。俺、どれだけ短絡的よ。
大学で何を学んできたのか。心理学科なんて属してるのにも関わらず、恋愛脳は女子小学生レベル。
ついでに言うと想像力も乏しすぎて、小説家にもなれねぇな。
………
なんて妄想、ツッコミを繰り返しながら、ドアが開くのをドキドキと待つ。
だが
五分経っても何の反応もなし。何だか拍子抜けだ。
留守かな??
もう一度インターホンに手を伸ばしたときだった。
『―――……はい。どちらさまですか?』
インターホンのスピーカーからくぐもった
女の声が聞こえた。