SHALIMAR -愛の殿堂-

「考えてみろよ。相手は年上のお姉さまだぜ?恋愛経験だって豊富だろうし、リードできなきゃフられるぜ?」


吉住は楽しそうに笑って俺を覗き込む。


リードできなきゃ、フられる。


……いや、あの人そうゆうのを求めてない気がする。


何て言うの?


鮭弁当を取るときのあの手さばき。しかもちゃっかりから揚げ弁当の半分もせしめていったしな。


男の手がなくてもたくましく生きていくタイプだな、ありゃ。


元旦に失った恋も全然痛手に思ってなさそうだしな。






それでも―――俺はそんな彼女を―――


いや、そんな彼女だから好きになったんだ。






―――


「こ、こんばんは!」


ベランダの窓を開ける音がして、俺は今夜も思い切って声を掛けた。


「こんばんは」


彼女は今日も俺に答えてくれる。



俺のシェヘラザード。




今夜は何を聞かせてくれるのだろう。





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