SHALIMAR -愛の殿堂-


夕飯……?


「いえ……まだ……これから、ですけど」俺はにこにこマートで仕入れた惣菜の入ったビニール袋を掲げると


「ちょうど良かった。私もまだだったの。


一緒にどう?夕飯作りすぎちゃったから」


は―――……?


シェヘラザードの言葉がまるで異国の言葉のように聞こえて、つまりは理解不能ってワケ。


俺はみっともなくその場でにこにこマートのビニール袋を胸に抱いて固まった。


「は?てかこの人誰」


と男が怪訝そうに俺と彼女を見比べ


その質問そっくりそのまま返したい、と思ったけれど口から出てこなかった。


男の口調は自信と力強さに溢れてて、俺なんてとてもじゃないが太刀打ちできそうにない。


「お隣の学生さん。たまに夕飯シェアする仲」


とシェヘラザードがこれまた淡々と言って……まぁ、間違ってはいない…


ケド


「お前の…新しいオトコ?」と男の方が疑わしい目つきで彼女を見ていて


「違います」と今度ははっきり否定した俺。


『まだ』と言う言葉は仕舞いこんだ。


「あんたには関係ないでしょ」彼女は男に冷たく言って、玄関から完全に出てくると俺の手を強引に引いた。


びっくり!した……


吉住とはそれとなくそうゆう話はしたことあるけど、あれはあくまでバーチャルの世界だったし、そもそも手が触れ合うことなんて早々ないと思っていたのに、それは予期せぬタイミングでやってきたのだ。


「何買ったの?あそこ、この時間帯なら安くなってたでしょ。


いいものゲットできた?」


と彼女の方は何でもないようにいつも通りの調子で語りかけてきて、その普通さに思わず俺も


「えと、今日はエビマヨと白身魚のフライと、ほうれん草の白和え……?みたいな。


50%OFF」


とふつーに答えていた。


「ヤッタじゃん。山分けしよ」と言いながら男の存在なんてまるで彼女の視界に入っていないのか華麗にスルーして扉を開けると、やや強引と呼ばれる仕草で俺は彼女の部屋へと招き入れられた。


パタン


扉がキッチリしまったそのすぐ後


「ちょっと!どうゆうことだよ!」


ドンドンっ!


男がドアを叩いてる音だけが背中から伝わってきて


どーゆうことって






俺が聞きたいよ!




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