SHALIMAR -愛の殿堂-

テキパキと動く彼女は手際が良いのだろう。あっという間に鮭入りのカルボナーラスパゲッティとサラダが小さなテーブルに所せましと並んだ。


ほかほかと湯気があがるパスタを見てちょっと感動。


レンジでチンやカップラーメン以外、最近湯気の立つ料理見てないし。


ついでに俺の買ってきた惣菜も並べるとちょっとしたパーティーのようだ。


「冷めないうちに食べて?」と勧められ、俺は言われるまま手を合わせて「いただきます」


フォークにパスタ麺を巻きつけて口に入れるとそれはクリームの濃厚さとレモンでも入ってるのだろうかサッパリ感が絶妙に口の中に広がった。


目の前に座った彼女は頬杖を付きながらにっこり微笑み、それだけでノックダウンしそうなのに


「おいしい?」と、まるで彼女が彼氏に言う夢の台詞で聞かれたときには、その場でひっくり返りそうになった。だが俺は何とか倒れそうになるのを堪えて


「うま……」


思わず言葉が出ると目の前の彼女は満足そうににっこり。


それはもう天使……と言うか女神の域だな。





「良かった。それ、生クリームと卵が賞味期限切れてたんだよね~」





と、あははと明るく笑う彼女は天使でも女神でもなく


悪魔そのものだ。


ゲホッゴホッ


激しく咳き込んで慌ててビールで流し込むと


「大丈夫、死にはしないよ」


と。悪魔通り越して魔王の域だ。相変わらず炸裂だな。


“美しい隣人”って、あれどんなあらすじだったっけ……俺、殺されないかな。


吉住っ!由紀恵は激しい女だぜ!



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