SHALIMAR -愛の殿堂-
食事も中盤になって、ようやく色々落ち着いて
「あの……さっきの男の人は…」と俺は気になっていたことを聞いた。
聞いちゃマズいことだとは重々承知だったが、ここまで言わば巻き込まれる形で引きこまれたわけだから俺にも知る権利もある。……と思う。とブツブツ考えてると
「別れた元カレ」
とこれまたさらっと言われて、
やっぱり……
俺の箸は止まった。口の中に物は入ってないのに、喉に物が詰まってつっかえてる感じ。
あんなかっこいい男が相手じゃ俺なんて太刀打ちできないよ。
「イケメン苦手とか言ってませんでした?震えちゃうとかも…」
「イケメン?誰が。てか元カレのこと言ってるの?だったらあれは違うよ」
と彼女は心外だと言わんばかりに顔をしかめる。
「俺から見たらイケメンっスけど。背が高くてスラッとしてて、かっこよくて」
「見た目だけよくても中身が伴ってなければ意味がないよ」
「中身が伴ってない相手と十年も……?」
思わず聞いていて俺は慌てて口を噤んだ。
だが時すでに遅し。
「あいつとは色々あったからね。腐れ縁ての?離れるに離れられない状況だったから仕方なく、ね」
だけど彼女は気を悪くした様ではなく缶ビールを勢いよく飲みながらカラカラと言った。
腐れ縁?離れるに離れられない状況って
何。
恋愛てお互い好き同士で成り立つものなんじゃないの?
と、恋愛ビギナーな俺は短絡的思考で彼女の言ってることが理解できなかった。
でも吉住だったら、分かるのかな。
はぁ。今ほど吉住にここに居て欲しいと思ったことはないよ。