SHALIMAR -愛の殿堂-
白ワインなんてはじめて飲んだ。意外に甘くて飲みやすい。白だからか?
「赤ワインの方が好きだったんじゃ…?」と聞くと
「よく覚えてたね」と彼女は物珍しそうに目をぱちぱち。
す、好きな人のことは忘れたくても忘れられない。
と心の中で呟いていると
「若いから脳の出来が違うのか」と、またもシェヘラザードはカラカラ笑う。
くっそ
俺の気持ちなんて全然知らずに。能天気にワイン飲んで、襲われても知らねーぞ。
知らねー………
―――――
―…
「~♪」
遠くで鼻歌が聞こえてくる。
何の曲か分からない。聞いたことのないメロディ。でも
耳に心地よい……
どこから聞こえてくるんだろう。
うっすら目を開けると、ベッドに腰掛け脚を組んだシェヘラザードがタバコをくゆらせながら窓の外をぼんやりと眺めている姿が目に入った。
その白い横顔……形の良いアーモンド形の……マスカラで伸ばした睫が囲んだ瞳から、一粒の涙が流れ落ちた。
泣いてる……?
ぼんやりする視界の中、その姿を薄目で捉えていると
「愛してる、なんて安っぽい言葉。バカじゃない。
それが尽きたら“やり直そう”?ふざけンな。
いや、バカは私……か。そんな言葉に縋ってきた私―――か」
彼女は誰に言うわけでもなく窓の外を見ながらポツリと漏らす。
それはさっき揉めていた男に向けられた彼女の内心だろう。