SHALIMAR -愛の殿堂-
夢かうつつかぼんやりした視界の中彼女が俺に気づいて
「あ、おはよー…てそんな時間でもないけど、起きた?」
そう聞かれて
………
ガバッ!
俺は飛び起きた。
「へ!?俺、寝てた!?」
「うん、そりゃもーぐっすり。お酒あんま強くなかったんだねー。ごめんね、無理に飲ませちゃうようなことして」
と、彼女は申し訳なさそうにして顔の前で手を合わせる。その顔に涙は見られなかった。
でも、目の淵が赤い。
やっぱさっきのは見間違いでも寝ぼけてたわけでも、夢でもなかったんだな。
「いえ…俺も無茶したっていうか」
「若い頃はあるよね、失敗」
失敗……過ぎる。好きな女の人の家で眠りこけるとか。
「あんまり無邪気に寝てたから襲っちゃおうかと思ったよ」
ニヤリ、と彼女は笑って「ガオー!」と言い両手を軽く挙げる。
ライオン??でも表してるのかな。
全然怖くないし。
てか相変わらず変。
食事も終わったし時間も夜11時だ。と言うことで俺は帰ることを決意。さすがにこの時間帯ならあの元カレもここを訪れてくることはないだろう。
「今日は色々ありがと。
ねぇ、イベントのサクラ出てくれない?ホントに人数足りなくて困ってるんだよね」
世間一般的に見ると美人だけど飛び抜けてと言うわけではないし
「これ、宣伝のちらし。ここに地図と趣旨を載せてあるから」
最初はすっげー感じ悪いし謎めいてると思ったけど、案外そうじゃなくて
「お友達も一緒の参加でいいよ?もちろんお給料は二人分出すから安心して」
中身おっさんだし、飾らないし、でもきつそうなナリで意外に料理うまいし
「女の子の年齢は二十代後半が中心だけど、年上とか好き?」
「好きです」
俺はあなたのこといっぱい知ってる。短い夜に交わした会話の中でいっぱいいっぱい
知った。
気持ちが溢れ出す。
俺は彼女が手渡してきたチラシを受け取り、そのままその腕を取り彼女を引き寄せた。