SHALIMAR -愛の殿堂-

呆然としながらも、「マンションの挨拶なんてこんなもんか?」と思うことでけりをつけ、すごすごと自分の部屋に帰った。


今度の論文は「現在社会におけるコミュニケーション不足」に決定だな。



アラビアンナイトの王さまじゃないが、俺はしばらく女不信に陥りそうだ。






――――

――


結局短い春休みを引越しの後片付けなんかで費やして、あっという間に休みが明けた。


春休みが明けると新学期だ。


山のような履修授業の科目を、まるでパズルを解くような顔つきでカリキュラム表に書き写しているときだった。


「火曜日…臨床生理心理学…と…」とブツブツ言いながらひたすら掲示板とにらめっこ。


一年のときは基礎的なもんだったが、二年になると本格的な専門分野がスタートするってわけだ。


1コマでも落とすと、留年!?恐ろしい事実に身震いしていると、


「タケトぉ~!!」


と親友の田村 吉住(Yoshizumi Tamura)が緊張感のない声を掛けてきた。


「健人おっひさ~♪」


吉住は相変わらず軽い感じで軽く俺の肩を叩いてくる。


吉住とは高校からの友達だ。


「履修科目?タケ、お前もう決めた??決めたんなら見せて~」


甘え上手の同級生。相変わらずちゃっかりしてやがるぜ。



それでも


「昼飯一食で見せてやる」


「B定食なら」


「A定に決まってンだろ」


「ええ~…がめついヤツだなタケは。そんなんだから女にモテないんだぞ?」


ぐさっ!


俺の気にしてることをさらっと言うな!!


「うるさい。男にかっこつけてどーする」


俺がブスリとして掲示板でカリキュラム表に書き写している隣で、


「昨日の合コン最悪だった~。だけどさっき可愛い新入生見つけた♪」と吉住はマイペースに話題を変えてる。


あ、そうですか。


と言う意味で吉住の戯言を無視して掲示板を見ていると


「ヨッシ~まだカリキュラム決めてないの?あたしの見せてあげる~♪」


同じ科の女の子たちが束になって通り過ぎた。



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