SHALIMAR -愛の殿堂-
ざわついていた会場内がシェヘラザードの一喝で、しん…と鎮まりかえった。
「いい?ここは私の開催したイベント会場なの。喧嘩は外でやって。
ぶち壊す気なら出てって」
はっきりキッパリと言われて外に顎をしゃくられ俺は目をまばたいた。
確かに……俺は彼女の為に怒鳴ったが、ここは彼女の開催したイベント会場だ。
俺は……
はじめて彼女が怒ったのを聞いた。見た。
「あの……」何か言おうとしたが、その後に続く言葉が出てこなかった。
被せるように彼女は冷たく一言。
「出てって」
まるで、先日まで降っていた雨よりも冷たい言葉に、俺の体も凍ったように動かない。
何か…何か言わなきゃ……
と思っていると、彼女は俺の席に置かれていた鞄を俺に突き出してきて
「帰って」と一言。
俺はおずおずと鞄を受け取り、
それを見送ることなく、くるりと踵を返して
「あんた司会でしょ?何やってるのよ。
何とかこのトラブルなんとか回避してよね」
と、元カレにも淡々と命令して、何事もなかったかのように一人行ってしまった。