SHALIMAR -愛の殿堂-


『タケは悪いこと何も言ってないじゃん。だったらさ、諦めるんじゃなくて突っ走れば?


てかそんなことで諦めるとか、お前の気持ちも大したもんじゃなかったんだな』


吉住に言われて、今度は俺の方が返す言葉に困った。


大した―――もの……なのかどうか俺にだって分からない。


だって、こんなに笑って怒って、ドキドキして。胸が押しつぶされそうになった恋ってきっとはじめてだから。


でも―――はじめてだからこそ、


大切にしたい。


きっとこのまま何もしないで想い出を想い出箱に仕舞っておくのもいいかもしれない。それも最悪な形の想い出だけど。


けれど俺にはまだ何か他にやれることがあるんじゃないか。


最悪な形ではなく、もっと違った形の……


出来ること全部やらないで勝手に、想い出の一つにしてしまっていいのだろうか。


「吉住………俺、どうしたらいい?」


結局、吉住を頼るしかできない俺。


でもどんなことでもいい。みっともなくても情けなくても縋れるものには縋らなきゃならない。


『お前にはお前しかできないことがあるんじゃないの?


考えてみろ?由紀恵さんが負った傷や悲しみを』


そう言われて俺はぼんやりと想像した。


彼女は元カレに浮気の告白をされて、傷ついた―――……?悲しかった……?





許せなかった




だから別れた。





俺にしかできないこと……それは何なんだ。


『何だっていい。考えろタケ。


お前の好きな小説でも映画でも、何でもいいから事態を置き換えるんだよ』


そう言われて俺は必死に考えた。


好きな―――物語……






「アラビアンナイト」







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