SHALIMAR -愛の殿堂-


『あれね~、俺の嘘』


と、吉住は相変わらずの軽い調子でケロッ


「は!嘘っ!?」


ワケも分からず目をまばたいていると、淀んだ雨の景色の向こう側で吉住がうっすら笑った


気がした。


『さっきも言ったろ?俺が居なくても一人で乗り越えなきゃ意味がないって』


まぁ確かに……いつまでもおんぶに抱っこじゃ人間成長しないしな。


「でも結局来てくれたじゃん……?何だかんだ心配…」


『そりゃそーだ。何せ親友のはじめての恋だからな。親心ってヤツよ』


親友……


はじめての恋。


「お前に親心を語られる日が来るとはな」


素直になれない俺は、何だか妙に照れくさくて思わず減らず口を叩いてしまう。


『まーねー♪大学の成績にはお前に負けっぱなしでレポートもお前に手伝ってもらってばかりだけどさ、恋の応援は俺にしかできねーだろ?』


確かに……


時々…いや、結構??かなりフザケタ答えが返ってくるけど、でもいつもちゃんと話を聞いてくれてた。


「吉住、サンキュ。俺……やらなきゃいけないことが出来た。


俺にしかできない方法で」


『おう。頑張れよ!


まぁガッツリ失恋したら、学食で慰めてやっから。あ、B定食ね』


と最後までチャッカリしてる吉住はひらひらと手を振り、


「そんときはA定だ」と俺が言うと、吉住は


くるりと俺に背を向けスマホを耳から離した。


遠ざかる吉住の背中を見送って、俺もスマホを持つ手をゆっくりと下ろした。


サンキュ


サンキュな、吉住。





< 85 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop