SHALIMAR -愛の殿堂-
『あれね~、俺の嘘』
と、吉住は相変わらずの軽い調子でケロッ
「は!嘘っ!?」
ワケも分からず目をまばたいていると、淀んだ雨の景色の向こう側で吉住がうっすら笑った
気がした。
『さっきも言ったろ?俺が居なくても一人で乗り越えなきゃ意味がないって』
まぁ確かに……いつまでもおんぶに抱っこじゃ人間成長しないしな。
「でも結局来てくれたじゃん……?何だかんだ心配…」
『そりゃそーだ。何せ親友のはじめての恋だからな。親心ってヤツよ』
親友……
はじめての恋。
「お前に親心を語られる日が来るとはな」
素直になれない俺は、何だか妙に照れくさくて思わず減らず口を叩いてしまう。
『まーねー♪大学の成績にはお前に負けっぱなしでレポートもお前に手伝ってもらってばかりだけどさ、恋の応援は俺にしかできねーだろ?』
確かに……
時々…いや、結構??かなりフザケタ答えが返ってくるけど、でもいつもちゃんと話を聞いてくれてた。
「吉住、サンキュ。俺……やらなきゃいけないことが出来た。
俺にしかできない方法で」
『おう。頑張れよ!
まぁガッツリ失恋したら、学食で慰めてやっから。あ、B定食ね』
と最後までチャッカリしてる吉住はひらひらと手を振り、
「そんときはA定だ」と俺が言うと、吉住は
くるりと俺に背を向けスマホを耳から離した。
遠ざかる吉住の背中を見送って、俺もスマホを持つ手をゆっくりと下ろした。
サンキュ
サンキュな、吉住。