SHALIMAR -愛の殿堂-
「付き合って五年ぐらい経ったときかな……周りが結婚ラッシュでねぇ、どんどん先越されちゃって焦ってたの。
何度か私からあいつに結婚の打診もしたけど、のらりくらりと交わされちゃって」
え……
ってことは最初は彼女の方の気持ちが強かった……?
ちょっとショックだったけれど過去の話だ。それに俺は“受け止める”と決めたんだ。
どんなに辛い事実でも、彼女がちゃんと話してくれてることをちゃんと受け止めなければならない。
「あー、このひと私と結婚する気ないんだな、だったら私もこんな毒にも薬にもならない男とずるずる行くより、新しい恋見つけた方がいいのかな、なんて思ってた矢先に何となくあいつの方から『結婚する?』って話が出て……」
と言うところでシェヘラザードは言葉を呑み込んだ。
シェヘラザードの元カレは“婚約破棄した”と言ったから、一度は彼女も結婚話に承諾したのだろう。
「……好き…だったんですか……?」
答えを―――
聞きたくないけど、聞かなきゃいけない。
ちゃんと彼女の悲しみを受け止めるために、俺のちっぽけな感情なんて今は必要ない。
だけど
彼女はゆるゆると首を横に振った。
え―――……
それって―――
「何て言うのかな……複雑でね。愛はないけど長い付き合いだったから、情はあった。
それにね、私が打算的だったから、ここで逃したらもう二度と婚期がこないと思っちゃったんだよね」
俺は
シェヘラザードが打算的だと思わないし、結婚は惚れた腫れただけでできるものじゃないことぐらい知ってる。
だから彼女が選んだ道も決して間違ってはいなかった。そう思う。
「結婚が決まって、両家の両親と顔合わせもして式の日取りも決まった頃ね、突然告白されたんだ。
過去の浮気を」
サイアクなタイミングだ。