SHALIMAR -愛の殿堂-
「サンキュ♪お礼は体でぇ~」
吉住が笑って手を振ると、
「やっだぁ☆でもヨッシーだったらいいかも」
なんてアブナイ会話を繰り広げながらも賑やかに立ち去っていく女の子たち。
「相変わらずのモテっぷりだな」
俺は若干呆れ顔。
ってか羨ましい。
『いいかも』なんて女の子に言われたことがない。免疫のない俺は冗談だと分かっていても言われたら、鼻血出してぶっ倒れるかもな。
「冗談に決まってンだろ?ほら、早く写せよ」
吉住はさほど気にしていない様子で、またも昨夜の合コンと新入生について話し出した。
今はイケメンがモてると言う時代じゃない。
いい男の条件てのは?
―――金がある??地位がある?顏がいい?背が高い。
そんなんじゃない。
トークだ!
顔が良くてもトークがなけりゃ。女の子が楽しめる話題をいつも持っていて、さりげなく気が利いて。芸人がモテまくるのは口が上手いからだ。絶対に!…たぶん。
適度に下品で適度に上品。
吉住はイケメンなのに、上記の条件をすべて満たしている。
つまりモテまくりってことだ。
女の子の好きそうな行動や言葉をがっちり掴んでいやがるからな、心理学なんてがんばって勉強しなくても十分生きていける。
こいつが連日連夜合コン漬けで、女の子漁ってるって知ったら学校の女子たちはどう思うかな…
ちなみに俺は上記の条件を何一つクリアできていない。
世間一般ふつーの顔の上に、女の子とお喋りすると緊張してうまく喋れない。
気を利かせるなんて余裕も、もちろんない。
だから彼女ができないんだ……心理学の成績もフツーだし?(プチうつだぜ)
「んで?引越しはどうよ?」
俺はたまに吉住と並ぶのがイヤになるが、こいつはいっつも気軽な感じで俺にくっついてくる。
比べられるのはイヤだけど、こいつは引き立て役として俺を必要としてるわけじゃなく、俺になついてくる。
だから嫌いじゃない。
それどころか―――少々世話好きのお節介なところがあったり。